2005-05-22
_ [雑記] バリスト
ふと昔のことを思い出したので書いてみる。
私のいた大学は、元号も平成に変わり20世紀も終わろうかという私の在学当時でも、まだ中核派とやらが幅を利かせているところであった。彼らは当然のように天皇制やら現在の国家権力やらを嫌い、なにかと反対運動をするわけだが、ちょうどその頃は大行天皇のご葬儀やら平成天皇のご即位やら現秋篠宮のご結婚といった、彼らの嫌いなイベントが目白押しで、まあつまりやたらと元気に反対運動をしていたわけだ。
で彼らの反対運動の中の一つにあるのが、題目にある「バリスト」である。60年代の学生運動が華やかなりし頃を知っている人には常識のような単語であるが、(私も含めた)それ以降の年代の人にはわからないだろう。
私が在学当時に体験したバリストは、だいたい以下のような推移をたどっていた。
- しばらく前から、中核派のビラに「XX(天皇家やらなんやらの儀式とかイベントとか)にすべての学生が反対していることを明確にするため、講義をストライキしよう!」と言ったことが書かれる。もちろん「ストライキって従業員が会社に向かってやるもんじゃないの? 学生が講義ストライキしても誰も困らないよ?」なんて突っ込みを差せないほどの勢いで。
- そうこうしているある日、講義に出席するために大学に来てみると、やたら学生がうろうろしているのである。なんだろうと思いつつ講義棟に入ろうとすると、なんと講義棟のすべての入り口が閉じられ、中に机などでバリケードが作られており、中には入れないのである。
- というわけで学生は講義に出席せず(できず)、そこで彼ら的には「ストライキ」になったと主張するわけである。そう言う流れで講義に出席するつもりで来た僕も君も、「ストライキに参加しに大学に来た学生」になってしまうのである。
- 後日、その学生が右往左往している風景の写真が「ストライキに賛同して参加してくれた学生たち」というキャプションで、彼らのビラに載せられたりする。
もうね、なんというかね、あほかと、馬鹿かと。「嘘を嘘で固める」という表現をここで使えないのなら、どこに出番があるというのか。若いうちはたいがい理想主義者なので、いわゆる共産主義思想にも多少はシンパシーを持っているものだが、こんなのを目前でされてしまうと、あっと言う間に雲霧消散してしまう。
そう言う大学だったので、公安当局とかは学生の赤化(共産主義にかぶれること)を心配していたとか言う話もあるらしいが、それは杞憂だよなあと思って私は見ていたものだった。いまだにその手の保守的な人は、赤化を防ぐために若者にサヨクを近づけさせないようにする、とか言うけど、逆にとっとと身近に見せた方がすぐに愛想が尽きるんじゃないだろうか。
今でもやってるんだろうかねえ。っていうかやってて欲しいね。理想を語る偽善者というものを身近で見るという体験はなかなかできるものではないからね。若いと「理想を語る人=善人」みたいに感じてしまうけど、理想のために醜くなる人間がいるということを知るのはそこから成長する第一歩になるだろうから。
これを書くに当たり、Googleで「バリスト」を検索してみたら、「チェンバリスト」とか「フレーバリスト」ばっかり引っかかるんだなあ。
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_ yamao [どうもっす.バリスト懐かしいねえ.確かにね,あれに政治的な意味をわざわざ見いだす学生は少なかったんじゃないかと思う...]