2009-08-07
_ [映画]バーダー・マインホフ 理想の果てに
連合赤軍ときたら次は当然（？）バーター・マインホフグループだろう、ということで渋谷はシネマライズで見てきましたよ。映画的には『実録連合赤軍・あさま山荘への道程』が対象と距離が近いウェットな描写であるのに対し、とことんドライ。
前半はほとんどチンピラ描写。まだ先鋭化する前の彼らをストリートギャング映画のノリで描く。銀行強盗して本格的に武装闘争し始めたあたりからシリアスな描写になっていく。追い詰められる焦燥、内部のいざこざ。そして逮捕へ。
割と早めに捕まって、それで終わりかと思ったら、そこからの法廷闘争がまた丹念に書かれる。しかし逮捕されたとたんにリーダーは自殺するはどんどん仲間割れするはのどこぞののへたれた連合赤軍とは大分違う。そして1977年の連続テロ〜バーターら幹部の自殺、いわゆる「ドイツの秋」の描写で映画は幕を閉じる。
見た限りでは日本の状況とは結構違う。最大の違いは内ゲバ殺人がなかったことじゃなかろうか。そのため大衆は結構過激派に共感してたようで、裁判シーンでは彼らの発言に聴衆が拍手を送るシーンなどがある。当時の街頭インタビューの記録映像でも、共感的コメントが多かったし。
警察長官が人格者で、事態の真の原因が抑圧的な社会状況であることがわかっている。しかし自分の立場からはそれをそうそう変えられないと言うこともわかっている（というかそれを簡単に変えられる立場など、そもそも民主主義社会には存在しない）。だからといって絶望にも過激にも陥ることなく、自分の立場でできることを少しずつ実行していく。周りの人間の無理解にあってもあきらめず誤解を恐れず説得を試みる。
一方バーター・マインホフグループのメンバーは、同じ社会状況の認識の上で絶望と過激に陥ってしまったわけで、つまりこの警察長官は彼らの対となる人物として描写されているようだった。グループの人間が頻繁に「（敵味方の）境界線を引く」という言い回しをしていたのと、長官が幹部たちの前で「彼らの動機を理解すべき」と説得していたのが代表的な対照じゃなかろうか。
またグループの連中が反省なしに行き当たりばったりで行動しているのに対し（映画内でそういう状況なのをマインホフが問題にするシーンがある）、長官は傾向と対策を練ってグループを追い詰めていく。そういうアプローチ的な部分でも対照的であった。
なぜかグループのメンツの描写がスタイリッシュ。まず服がファッショナブルで、銀行強盗をミニスカでやったりするし、刑務所の出所シーンでは、刑務所のドアが開くとそこには毛皮のロングコートをバシッと決めたメンバーが！とかそんな感じ。
他にも警察署を爆破するときも爆弾仕掛けて、警察署から振り返りもせずに立ち去るその背後で爆発する建物、みたいな表現てんこ盛り。ちょっとかっこいいよ。
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