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人生はユーモアの調味料

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2003-11-24 神田古本市 [長年日記]

_ [調査メモ] 社会主義伝道行商

社会主義伝道行商 社会主義伝道行商

_ 先日の神田古本祭りで、『社会主義伝道行商日記』を見かけて興味を持ったのだが、タッチの差で買いそびれたので、ちょいと調査。

社会主義伝道行商というのは、1904−5年にかけて行われた、社会主義を広報運動である。平民新聞の発行元である平民社の社員の荒畑寒村・小田頼造・山口義三が中心となっている。

牛乳配達に使われていた荷車を赤く塗装し、そこに「社会主義伝道行商」と書かれたのぼりを立てて各地を行商し、各地で平民新聞社の読者との交流・書籍の販売・講演会を行った。「伝道という言葉遣いからわかるとおり、キリスト教の影響が強い運動、というより初期社会主義者はキリスト教信者とかぶっていることが多い。

_ [読書メモ] 『ふたたび朝鮮で』

これも神田の古本祭りで200円で入手した本。

広島の原爆を世界に広く報道したことで有名なウィルフレッド・G・バーチェットが、朝鮮戦争停戦後の朝鮮半島情勢を書いた本。1968年1月に脱稿したらしいが、それはちょうど先に書いた青瓦台襲撃未遂事件プエブロ号事件がおきた直前である。ということでこれらの事件については本文では触れられておらず、末尾の訳者解説で触れられている。と言う言い方も正確ではなくて、実は触れられているのは、これらの事件ではなくプエブロ号事件のみである。青瓦台襲撃未遂事件については一言半句も出ていない。まあつまりそう言うように偏った本である。

朝鮮戦争停戦会談の頃の裏事情などが書かれているのだが、曰く国連(アメリカ)軍側の発表に嘘が多いので、最初はそちらの発表ばかり記事にしていたいわゆる西側(今となっては懐かしい響きだ!)の記者も、最後には東側の発表を参照するようになったそうな。彼はこれを西側帝国主義の欺瞞を示す例としてあげているが、今の目で見てみると、それは単に、東西両陣営がどちらも情報操作を行い始めているので、それに気がついて両方の情報を手に入れようと努力する西側記者と、それに気がつかないで親方日の丸発表を丸のみしている東側記者の姿なのである。

後はお決まりの農業・工業における大増産について述べられている。曰く農工業の生産量が日帝支配時点の数倍になったとか。後日その数字自体が全く嘘だったことが判明するのだが。それに社会党が昔ネタにしていた税金が撤廃された話とか(p.112)、初めて作ったトラクターが逆走した話とか(pp.188-189)。後者の話は当時の北朝鮮の低い技術力を示しているわけだが、その当時の知識人は「逆に自力で一歩一歩進んでいる証拠である」とかえって褒めそやしたという有名な話だ。
 また当然のように、開戦してきたのは韓国側であると書かれている(p.164)。実際に民衆にインタビューした調査の結果ということなのだが、そのインタビュー自体1年後で、それをそのまま信用して記事を書いているあたりが今となってはちょっとね。

まあ今の目で見るとよくもここまで北朝鮮を褒めれたなと思うような内容である。1968年といえばいわゆる北送事業も下火になり、北朝鮮の状況は少なくとも日本ではすでによく知られたものであったはず。

まあただ、太平洋戦争終戦〜朝鮮戦争停戦後数年というのは、北朝鮮にとっては一番いい時期だったわけで(逆に韓国側がアメリカ色の強い軍事政権だったりして最悪の時期)、当初は一見期待を抱けそうな雰囲気は確かにあったようだ。とは言えそれが張り子のトラだったことは、目のあるモノには明らかだったようだ(特に技術者や農業技術者は、漏れ聞く話(先述のトラクターの話など)や実際の状況(化学肥料ベタベタの農業とか)を見て、先述のような大増産の話に疑問を投げかけていたらしい)。

この本を現代読む意義は、けして単なる現在の時点からの先人へのあざけりだけではなく、根拠のない思想的熱狂はいとも簡単に訪れること、そしてその熱狂を冷静に判断するのには必ずしもジャーナリストは当てにならないということを読み取ることであろう。こう言う思想的熱狂は、そう体験できるものではない。そして体験しておかないと、いざ巻き込まれたときに対応することが出来ない。

私がこのような空疎な熱狂を実感できたのは、80年代の心理学内での認知科学ムーブメントであった(なんせ「認知科学は,科学の中で,『検証可能性』の基準を唯一絶対の基準と定めることを放棄した最初の科学かもしれないのである」とか口走るくらい見失っていたから)。それ以前の社会的な大きなムーブメントとして、この共産主義熱狂というものに興味を持っているわけだが、それを批判する本はあってもその熱狂を素直に伝える本は少ない。この本に限らず、たとえばここ に挙げられているような本はもっと巷に出回って読まれてもいいのではないか。そして思想的な熱狂というものがどれだけ空疎であるかはもっと知られてほしいものである。

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